一人の生徒さんが病のため遠くに旅立たれました。
刺繍教室に入られた時にはすでに手術をなさっていたらしいのですが、私が知ったのはずっと後からでした。
まわりの方に気を遣わせるのが嫌で普通にしてもらいたいとの希望でした。
竹を割ったような気持ちのよい性格で、愚痴もいわないで辛いとも言わなくて。
彼女の言葉に救われる事もたびたびでした。今でも何かあるとその言葉を思い出します。
刺繍にはこだわりがあり春の花の大きな作品をつくられていましたが、ステッチが気に入らないとすぐに直し、それはとても丁寧できれいなものでした。
ある日早く仕上げないと間に合わないかもと、言われたので同じクラスの方に体調が悪いの?と問い合わせをしたのですが。。。
それからも普通どうりに刺繍をしながら、おしゃべりを楽しみ数ヶ月が過ぎて、
ある日彼女のクラスに向かう車に電話があり、今日は○○さんのお宅ですよね、と彼女、そうです、その次は○○さんですよね、と、その次のクラスの場所の確認もされ、それでは後ほどね、
というのが私の聞いた彼女の最後の言葉です。
残されたお嬢さんが8歳で、本当にさぞ心残りだった事と思います。
作品はそのお嬢さんに残しておきたいとの気持ちから作られていたのです。
仕上げる事はできなくて無念でしたが、
私がその作品をクリスマスまでには心を込めて作る事を約束しました。
大きな袋に入った作品は彼女を思い出して、悲しくてしばらくは開ける事もできない状況でした。
数ヶ月が経ち10月の半ばからやっと心を落ち着かせて作品を開く事ができ、作品づくりを始めました。こだわりのある彼女ですので、彼女に語りかけながらの作業です。
それから1ヶ月以上の作業でしたが今日、全て仕上げる事ができました。感慨無量です。
えりさん長い間よく頑張って来ましたね、丁寧に作られた水仙、チューリップ、パンジー、メレアグリス、ムスカリの花々がきれいでとても良い作品に仕上がりました。
あらためて心よりご冥福をお祈りいたします。